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最近読んだ本 空港にて 文春文庫 村上 龍 村上による短編集。「クリスマス」を除いて全て「〜にて」、といった日常的な場所においておこる出来事を描いている。語り口は主人公による一人称。設定された場所における限られた時間の中で、考えうるごくごく当たり前の出来事が丁寧に描写されている。普段では「コンビニに行ってコーラを買った」程度の行動にも関わらず、日常そのものであるそのたわいもない所作の積み重ねを小さく小さく解体し、いちいち思考と混ぜ合わせることによって短い時間の行動が異常な密度の感情に絡めとられている。その密度の高さは感情と行動の描写を限りなく同時に体感させ、妙なリアルさをつくりあげている。 この作品が文庫化される以前のタイトルは「どこにでもある場所とどこにもいない私」であり、不特定多数の私の日常をフェティッシュにクローズアップさせている本作品をより直接的に表現している。ただ文庫化にあたり、何でもない日常において否応なく感じられる空虚感の中にも見つけられる一抹の希望に対し、以前のタイトルがあまりに悲観的過ぎたと感じたのではないだろうか。反体制的作品を多く残す村上ではあるが国外脱走というロマンが薄れてきた現代において、本作品ではその方法論自体に着目している。代表的長編作品におけるダイナミックな逃避から、はかない日常におけるセンチメンタルな逃避にまで幅を広げる試みだった。 理由 新潮文庫 宮部 みゆき 宮部による長編ミステリー。インタビューの形式によって事件の全貌をドキュメンタルに描くその手法にまずは唸らされる。事件の全貌が周囲の人々によって多角的に描写されることで、ありきたりなニュータウンにおける殺人事件というストーリーを高位に引き上げている。ミステリーならではの種明かしがなんでもない場面でなんでもないように明かされるのも、そこに視点が置かれていないためであり戦略的に初期設定を安易にしていることが伺える。全文を読み終えたとき、なんとなく盛り上がりのない読後感に少々失望するものの、本を閉じたその時に、タイトルが「理由」だったことを思い出し、その視点が事件そのものではなくまさに「理由」におかれてたものだと納得させられた。だって「理由」なんだから、と宮部がほくそ笑んでいるようで、爽快なむかつきを覚える。
by tezzobasar
| 2006-05-06 04:58
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